当院の方針
診療について
耳鼻咽喉科で扱う急性、慢性の感染性疾患や、難聴、耳鳴、めまいといった感覚器の障害は一度の診療、治療ですべてが解決するわけではありません。経過を診ていくことも重要な診療行為となります。診察の際に、治療方針の概要を(次回受診の目安も含め)お伝えし、再受診がし易いように時間予約制の診療を行っています。通院の回数を減らしていただけるよう、処置、処方に工夫をしておりますが、頻回の通院が必要な病状の場合もあります。
必要最小限の検査は積極的に行い、それらの結果に基づいた適切な治療を行います。耳の聞こえに関する症状であれば、純音聴力検査(聞こえを周波数別に測定する検査)やティンパノグラム検査(鼓膜の動きの検査)、感染症を疑う場合は検菌検査(菌の種類の同定や、薬剤に対する感受性の検査)や各種の迅速検査(インフルエンザウイルス、溶連菌、アデノウイルス、RSウイルス)などです。鼻や咽喉の症状についてはレントゲン検査やファイバー検査も必要であれば行います。結果の説明の際に検査の意義も併せて説明しております。
根拠のある必要な薬剤のみ、効能を説明の上、処方を行っています。授乳中の方には、抗菌薬以外は、薬剤の添付文書にて授乳中でも問題ないとされる薬剤のみを処方します。診察の場でもその旨十分説明しております。妊娠中の方の場合は、必要な抗菌薬を担当産科医に確認の上内服していただくことがあります。
クリニック内での感染予防について
耳鼻咽喉科は、多くの急性、慢性の感染性疾患を対象とします。クリニック内での感染予防のため、以下の取り組みを行っております。ご協力をお願いいたします。
- 1)完全予約制による待ち時間短縮
待合でお待ちになる人数をできるだけ減らすため、完全予約制を導入しております。混雑緩和のため、時間当たりの診察人数を調整させていただいております。診療予約時間に遅れないようご来院ください。暑い日も寒い日も、待合室の空気の入れ替えを促すために、入り口の扉、待合室の窓は開放しております。ご了承下さい。接触感染を防ぐため、キッズコーナーは設けておりません。 - 2)マスク着用
感染予防のため、スタッフは全員マスクを着用させていただきます。また、セーター、カーディガン類は着用しません。来院の患者皆様にマスク着用をお願いいたしております。 - 3)すりこみ式手指消毒剤による消毒
スタッフは頻回に速乾性すり込み式手指消毒剤にて手指消毒を行っております。受付に足踏み式の速乾性すり込み式手指消毒剤を置いていますので、来院の患者様も手指消毒をお願いいたします。
- 4)専用の器具洗浄室
専用の器具洗浄室を独立して設け、オートクレーブ及び薬液洗浄にて適切な消毒処置を行っております。処置に用いるガーゼ、綿球類もクリニックで改めてオートクレーブ処理を行ったものを用います。
電子スコープ及び小児用ファイバースコープ用に2台の自動洗浄機も導入しております。
抗菌薬の適正使用の取り組みについて
抗菌薬(抗生剤)は細菌感染に有用ですが、不適正な使用のために、抗菌薬に耐性を持つ(抗菌薬が効かなくなってしまった)細菌の増加が大きな問題となっています。
いわゆる「かぜ症候群」はウイルス感染により引き起こされるもので、抗菌薬は効きません。しかしながら「かぜには抗生物質(抗菌薬)」という誤った認識が今でも広く流布しています。
耳鼻咽喉科で扱う疾患のうち、急性咽喉頭炎、急性扁桃炎は、細菌感染によるものか、ウイルス感染によるものか(いわゆる「かぜ症候群」によるものか)は視診のみでは判断がつきかねます。抗菌薬が必要となる溶連菌感染症との鑑別を確実に行うために、迅速検査を積極的に行っています。また、その結果をまとめたものを学会誌にて発表しております。
学会誌
- 「耳鼻咽喉科診療所で診るA群β溶血性連鎖球菌感染症」
- 耳鼻臨床 105:145-152, 2012
- 「小児の急性中耳炎とA群β溶血性連鎖球菌感染症」
- 耳鼻臨床 106:397-402, 2013